吸光度の変化の測定は反応速度を研究する上で有用な手法である。 ここではよく知られた、アルカリ性条件下でのメチレンブルーのグルコースによる還元反応をCHEMUSB4分光光度計を用いて追跡し、 吸光度変化の測定に習熟することをめざす。 メチレンブルーは還元されると無色のロイコ体となり、ロイコ体は容易に酸素酸化を受けて青色のメチレンブルーに戻る。
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図 II-1. メチレンブルー溶液の10秒おきの吸収スペクトル変化。 | 図 II-2. メチレンブルー溶液のいくつかの波長での吸光度の時間変化。 |
ここでは分光光度計を使って、吸光度の時間変化のモニター法を練習してもらいます。 題材として採用しているのは、高校の化学クラブなどではおなじみの「青いフラスコの実験」。 無色のフラスコを振り混ぜるとメチレンブルーのロイコ体が空気酸化を受けて青くなり、 しばらく置いておくとグルコースで還元されてロイコ体に戻って、 また無色になるという文化祭の出し物などでよくあるものです。 もし分光光度計の操作に失敗して、時間変化がうまく取れなくても、 もう一度光学セルを振り混ぜるだけで、納得いくまで繰り返し実験ができます。
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図 2a. 青色が消える。 ここでシャカシャカ振り混ぜる。 | 図 2b. 青くなる。 | 図 2c. 待つことしばし。 色が消えてくる。 | 図 2d. 色が消える。 空気と触れている液面近傍は青が残る。 ここでまた振り混ぜると青くなる(2b へ)。 |
ただこの反応、 メチレンブルーのロイコ体の酸化還元だけで済ませられるほど単純ではありません。 可視部だけに注目すれば、溶存酸素の減少にともない、 急速にロイコ体への還元が進んで吸光度が減少するということでよいのですが、 300 nm 付近の紫外部の吸収を見ていると、 「その後の話」のあることがわかります。 可視部の吸収が急速に失われる一方、 紫外部にゆっくり増加していく成分があるのです。
おそらくロイコ体への還元に際して、何らかの配糖体のようなものが生成し、 その分解を見ているのだろうと予想はしますが詳細は不明。 有名な反応なので、何が起きているのか、 もう誰か詳しい研究をしているはずだと思うのですが、 まだそれらしい文献・情報に出会えていません。 ご存じの方あれば、ご教示願えればありがたいところです。