屈折率は迅速・容易に精度よく測れ、糖度、塩分をはじめ、組成が知れた溶液の濃度をモニターするのに幅広く利用されている。 ここではポケット屈折計 PAL-RI(アタゴ社製)を用いて、 シクロヘキサン(nD20 = 1.427)とトルエン(nD20 = 1.496)の混合溶液の屈折率の濃度依存性を調べ、 濃度未知の溶液の濃度を決定する(nD20 はナトリウムのD線(589 nm)に対する20 °Cにおける屈折率)。 屈折計 PAL-RIの精度は±0.0003程度(分解能は0.0001)なので、今回の混合系の組み合わせでは、 およそ ±1 % の精度で組成の決定が可能である。 なおポケット屈折計 PAL-RIの筐体はABS樹脂でできており トルエンなどの溶剤に侵される。 測定に当たっては、溶液が筐体に付かないように注意する。
δnt = -1.2 × 10-3 (n - 1.02) δt (1)
一般に温度を下げる( δt < 0)と屈折率は大きくなり(δnt > 0)、 式 (1) を用いると、たとえば23 °Cで屈折率 n が1.4480 のとき25 °C換算の屈折率は1.4467となる。 なお屈折率計が表示する温度は屈折率計本体の温度なので、0.1 °Cまでの分解能で表示されていてもあまり高い精度は望めないことに注意する(PAL-RIの古い機種の分解能は1 °C)。*1 アイクマンの式から δnt = [(n2 - 1)(n + 0.4)/(n2 + 0.8n + 1)] αP δt が得られ (αP は膨張率(1/V)(∂V/∂t)P)、 n ≈ 1.4 程度であれば -(1.10n - 1.12) αP δt と近似できる。
n = n2 + (n1 - n2)m + k m (1 - m) (2)
というかんたんな式に最小2乗法を用いて当てはめることで評価することを考えよう (n1は純シクロヘキサン n2 は純トルエンの屈折率、 kは実験的に決める係数)。 δn = n - [n2 + (n1 - n2) m ] が m (1 - m) と比例関係にあるものとして最小2乗法を適用して係数 k は決めればよい。 図6-1に典型的な実験結果を示す:図6-1. シクロヘキサン-トルエン混合物の屈折率の検量線の実験例。 (a) 25 °C 換算の屈折率 n は質量分率 m に対し負の偏倚を示し、 (b) 偏倚はおおむね k m (1 - m)という関数で評価できた。
m(0) = (n - n2)/(n1 - n2) (3)
をとり、
第 1 近似: m(1) = m(0) - [k/(n1 - n2)] m(0)(1 - m(0))
第 2 近似: m(2) = m(0) - [k/(n1 - n2)] m(1)(1 - m(1))
第 3 近似: m(3) = m(0) - [k/(n1 - n2)] m(2)(1 - m(2))
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*1 今回の場合は非線形項が2次関数なので根の公式で容易に解くことができるが、 もっと複雑な非線形項を持つような場合にもこの逐次近似の方法は適用可能である。 ただし非線形項が大きくなってくると逐次近似が収束しなくなってくるので注意が必要。