いちょう No. 99-17 99.12.24.

12月21日(火)、総長交渉と引き続き懇談が行われました。今回の総長交渉・懇談に出席された、前本部副委員長、化学の吉村洋介さんに、内容の紹介も兼ねた感想を寄せていただきました。


12月21日の総長交渉・懇談

化学 吉村 洋介

12月21日の火曜日、午前10時から総長交渉、そして交渉を終えて11時30分ごろから12時15分まで引き続き総長懇談が行われました。正式な記録は年明けにでも公開されることと思いますが、今回の総長交渉と懇談について、ぼくの見聞きしたところをかなり主観を交えながら紹介します。

総長交渉へ
総長懇談へ

突っぱねればよい、というものではないでしょう  ――― 総長交渉

今回の交渉は、図書館の後藤書記次長が「書記長代行」として進行役を務める形で行われました。ぼくが出席したこれまでの交渉では、伊藤元書記長、深見前書記長など、海千山千の手足れ(失礼!)が仕切っておられたのですが、今回、後藤さんはまさに初陣。いささか緊張しておられたようです。そのせいか出席者の紹介などもなく、パタパタと交渉は進められたように思います。交渉では、①事務一元化と定員削減、②校費の積算方式の変更、③職員の賃金改善、④昇格における男女差別、といった所が主要な論点でした。組合側出席者から、いろいろ突っ込んだ質問や要求が出されましたが、交渉の結果は率直に言うと、これまでより総長の姿勢が後退した所で終わったと思います。

その頑(かたく)なさ ―― 昇格の男女差別問題

特に今回の交渉の中で、質問・要求が集中した、昇格の男女差別について、

「男女の昇任に差別はないと認識している」

という見解を、総長はついに撤回しませんでした。今後の是正の方向についても、示すことはありませんでした。さらに「格差解消に努力する」「今後検討する」という言葉さえ聞くことができませんでした。

その頑なな姿勢には、率直に言ってあきれました。50歳以上で女性では主任より上(専門員以上)の比率が2割で、男性の9割と正反対といった数字などを示されても(いちょうNo.99-10[99.11.4]No. 99-11[99.11.11] 参照)、総長は何もまともに答えることはありませんでした。女性部から、男女差別撤廃条約に基づいての追求(「実態として de facto の平等」)もありましたが、総長はそれにも答えることがありませんでした。時計台の事務職員の女性比率の低さ(8%程度。全学では30%程度)についても、総長はついに答えることがありませんでした。「差別がないが、結果的に大きな開きが出る」と言いたいなら、その根拠を明確に示すべきでしょう。それも明示できないまま「差別はしてない」というのは、最近辞任したどこかの知事と同レベルと言われてもやむをえないでしょう。

当事者能力は??

その他の問題では、これほどひどくはありませんでしたが、当事者能力を疑わせるような対応が目に付いたことは、長尾総長にとっても残念なことであったと思います。校費の積算方式の変更(いちょうN0. 99-5 [9.22]参照)に関わる問題については、「この先文部省が何を言ってくるかわからない」ので、学内での対応については(議論も含め)特にしないというのです。こうした重要問題に対し、学内でしかるべき対応を用意するとともに、文部省に対し発言するべきことはする、というのが“総長”というものではないのでしょうか。

また他省庁に比べ、文部省、とりわけ大学の職員の格付けが2級程度低い問題についても、総長自身の見解は聞かれず、また格差解消のため積極的に努力しようという姿勢は示されませんでした。そして「他省庁より待遇が悪い原因については、組合の方で検討して下さい」というありさまです。前任者を持ち出すのは気の毒かもしれませんが、井村前総長は、もっと積極的に職員の立場に立って語ってくださったように思います。少なくとも、職員の士気を鼓舞すべき立場の者として、こうした対応はとうてい誉められたものではないでしょう。

サポート体制は大丈夫??

交渉での長尾総長の対応についてここまで、いささか辛口の評価をしました。しかし、こうした職員の待遇に関わる問題までを、ことごとく総長に背負わせるのは酷なことかもしれません。それならば総長を支えるはずの事務局長以下の事務局の面々が、総長が交渉の席で窮地に立っているのに、それを積極的にサポートしようとしなかったのは理解できません。今回の交渉で、事務局長、人事課長といったあたりが発言することは、ついにありませんでした。総長を支える今の体制は、大丈夫なのでしょうか?

なお今回の交渉では、看護婦、定員外、パート、それぞれから病院長交渉や総務部長交渉に臨むに当たっての意見表明がありました。その中で、パート職員を代表して物理の松尾さんが、自作の短歌など披露されながら、朗々と語られたのは印象的でした。


第3キャンパスへの熱意はあるのだが・・・  ――― 総長懇談

懇談は経済の大西副委員長を進行役に、独立行政法人化、運営協議会、第3キャンパスといった話題を中心に行われました。

この懇談で印象的だったのは、

「第3キャンパスは、必ず実現する」

という総長の並々ならぬ強い決意と

「独立行政法人化は、向こうの出方待ち」

という受け身の姿勢でした。

第3キャンパスへの熱い思い

桂坂の第3キャンパスについて、まず補正予算の概要についてお聞きしたのですが、実は補正予算が決まって一月近くたつのに、「新聞に載った以上のことはわかっていない」とのこと。補正予算がらみではいつものこととはいえ、どうやら年明けから、目まぐるしい作業が始まるようです。次いで工学部の出席者から、特に交通アクセス(吉田キャンパスから現状ではバスで1時間半ぐらいは見ておかないいけない)、厚生施設(食べるところが周りにない)について不安の声が出されました。これに対し総長は、生活や交通に関わるインフラの整備については、すでに土岐前工学部長を委員長とする「キャンパス委員会」(長尾総長は正式名称を失念したとの事)で審議してもらっていて安心してほしいとのことでした。

問題は第3キャンパスの建設の今後の見通しなわけですが、これについては総長の決意、主体性(リーダーシップ?)が色濃く示されたと思います。出席者からは、今回の補正予算で土地取得より建物建設を優先する形で金が下りてくる(総額130億円ぐらいで、その内土地取得は20億円と、予定の1割も買えないぐらい)、あるいは来年度から緊縮財政に転じ、潤沢な予算配分は期待できないことなど、将来の見通しについて不安の声が出されました。これに対し総長は、

「文部省にも必要性についてはよく理解してもらえている」

と他の問題では見られなかった、強い調子で見通しを述べました。そして「(もし国の財政事情などで計画が頓挫しそうになったら・・・)銀行から大きな借金をしてでも・・・」という発言まで飛び出すという次第。

独立行政法人化問題への醒めたまなざし

これが、独立行政法人の問題になると

「国大協は反対している」
「私が何か言ったところで、たいした影響力はない」

といったあんばいで、何かよそ事。

昨年度、ぼくが役員をしていた時に出席した懇談の時の印象では、総長は独立行政法人について

「難しいながらも考えていかないといけない」

という立場でした。それは宇宙の太田さんが出席された、この10月の懇談でも変わっていないようです(いちょうNo. 99-8[10.21]参照)。それが今回の懇談での総長は、独立行政法人化について考えることさえやめ、「寝た振り」路線(?)に徹することに腹をくくっているように思われました。

これにはこの11月の国大協総会で

「いろいろ意見があってまとまらなかった」

と語った総長の全国情勢への認識があるのかもしれません(そこで“リーダーシップ”を発揮して欲しいところだが)。京大の設置形態検討会(丸山学部長もメンバー)の検討内容の公開についても、

「どういう形で公開することになるか考えたい」

といったものに止まり、世に向けて発言しようというものではないようです。

なお一部で伝えられる「明年1月に国大協総会」という話は、

「そういうことは予定されていない」

と明確に否定し

「4月早々に文部省が何らかの案を出すようだが、その前に何かやることは決めていない」

ということでした。


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