2004.5.9.
「合金の分析」ノート  吉村洋介

亜鉛の重量分析による定量: 色弱者のために

1999 年度に色弱の学生が学生実験をすることになり、急遽実験課題の見直しを行うことになりました。 当人に確認してみたところ、赤→青という変化は分かるけれども、赤→黄は判定がしかねるということで、他の課題は何とかなるのですが、XO を指示薬としたキレート滴定のところだけは何としてでも変更しなければなりません。 そこでオキシン(8-キシリノール)を用い、亜鉛のオキシン塩 (C9H6NO)2Zn として沈殿・分離し、重量分析する手法の導入を企画しました。

この実験方法・操作は現在は廃止されている「黄銅分析方法」JIS H1211(あるいは「白銅及び洋白分析法」JIS H 1231)の中の亜鉛の分析法の、後段の部分だけを取り出したものに相当します。 (JIS では「硫化水素分離重量法」とされ、亜鉛をイオン交換樹脂で分離するのではなく、硫化水素で沈澱分離することになっていました。) 手順の設定に1週間ぐらいしか時間の余裕がなかったのですが何とか間に合い、最後の発表会のときに当人含め、重量分析に取り組んでくれたグループが元気に結果を発表してくれたのをうれしく聞いたのを覚えています。

オキシンによる亜鉛の重量分析操作は次のとおりです。

オキシンによる亜鉛の重量分析

時間的な余裕があれば、ガラスフィルターの恒量化を行っておくように指示することにしています。 ガラスフィルターの恒量化は、ガラスフィルターで温水 100 mL をろ過して洗浄した後、所定の温度 140℃のエアバスで乾燥する操作を繰り返すことで行います。

なおJISではガラスフィルターに、さらに目の細かい 1G4 を指定しています。 けれども他の課題では 1G3 を使うこともあり、実際にやってみて 1G3 で十分だと判断しました。


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