2023.2 / 2022.12
吉村洋介
基礎物理化学 化学熱力学とその周辺

1.物理量と単位のはなし

高校までに物理量の次元や単位と単位の変換については、 ある程度学んでいるでしょうし、 国際単位系 SI についても、大学に入って最初に学ぶところだと思います。 けれども光速やアボガドロ定数などが定義量になっていることなどは知られていても、 意外に表記法のルールなどについては、知られていないようです。 ここではそうしたお作法に類することから始めて、 化学で登場する代表的な物理量である物質量、そして濃度・組成について紹介したいと思います。 なお「物理量の単位と数値のはなし」なども、 参考になるかもしれません。

1-1.物理量とその表現

物理化学では、物質の示すさまざまな特性について「大きい」「小さい」から一歩進んで、 それを「物理量」として捉え、「どれくらい大きい」「どれくらい小さい」を問題にします。 それにはさまざまな “物差し” を用いて測定(計量)を行うわけですが、 この “物差し” になるものが「単位」であり、測定の結果として「数値」が得られます。 こうして数という形にして(100 円も 100 本も 100)、数学の土俵で、微分や積分などといった道具立てを利用して、 物質の理解を目指そうとするわけです。

広い意味での物理量は、物体の諸現象に関わる量一般のことで、 たとえば包丁の切れ味、洗剤の泡立ち、ラーメンの旨さといったものも物理量になりえます。 しかし広い意味での物理量は、往々にして客観性を欠き、数値との対応があいまいです。 ここではもっぱら、いわば「数字になる」狭義の物理量を議論します。 なお明るさや音の大きさといった人間の感覚と密接に結び付いた量も、 人間の感覚に対する適切、厳密な評価を施すことで数値化、物理量として扱うことができ、 心理物理量 psychophysical quantity と呼ばれます。

日本産業規格(JIS)では物理量を 「物理学における一定の理論体系の下で次元が確定し、定められた単位の倍数として表すことができる量」(JIS Z8103:2000 計測用語) としています。 なお JIS では材料の硬さ、包丁の切れ味、洗剤の泡立ちといった量は、 工業量 industrial quantity と呼ばれることになります。

物理量は上記の定義からも明らかに、一般に数値と単位の掛け算で表現されます。

(物理量) = (数値) × (単位)

物理量がこのように書けることは高校でも習いますが、 表記法についてはあいまいになっていることが多いようです。 国際単位系 SI で決まっている表記法で、次の点には特に注意してください。

数値と単位記号の間にはスペースを挟む。

いくつか例を示しましょう。

物理量の表記例:
R = 8.314 J mol-1 K-1
R = 8.314J mol-1 K-1, R = 8.314 J mol-1K-1, R = 8.314 (J mol-1 K-1) などは不可です。 (単位記号の間を中黒点で挟む R = 8.31446 J·mol-1·K-1 は可です)
v = 340 m s-1
v = 340 m·s-1, v = 340 m/s は可です。 v = 340·m·s-1, v = 340m s-1, v = 340 ms-1, v = 340m/s などは不可です。
k = 8.3 s-1
k = 8.3 /s は不可です。同様に NA = 6.022 × 1023 /mol なども不可です。

また手書きでは、書き分けは面倒ですが、単位記号はローマン体(立体)を用い、 物理量を表す記号(量記号)は通常イタリック体(斜体)を用います。

イタリック体と斜体(oblique type あるいは slanted roman)は元来は別物ですが、 理工系ではたいてい区別せず同一視しています。 またフォントの種類によっては、イタリック体と斜体が同じです (例えば MS WORD で、小文字の a や f について、フォントを segoe UI にしてイタリック指定すると文字の形が変わりますが、 arial でイタリック指定しても文字が傾くだけです)。 なお日本語のフォントには、そもそもイタリック体というものがないようです。

このような表記のルールは、些末なことのように思われがちですが、 物理量が数値と単位の積で構成されていることを確認する上で大切です。 特によく問題になるのは、数値と物理量の弁別です。 次の例題 1 を考えてみてください。

例題 1. 丸い風船にポンプで空気を送って膨らませる。 ある圧力範囲でポンプの圧力計の示度 x (kgf cm-2) と風船の直径 y (m) の間に次の関係があったとしよう:

y = 0.22 + 0.52 x

kgf cm-2 単位の圧力計を atm 単位のものに替えたとき、 圧力計の示度 z (atm) と風船の直径の間の関係式はどうなるだろう? 1 kgf cm-2 = 0.968 atm であるとする。

1 kgf cm-2 は 1 cm2 あたり 1 kg の質量にかかる重力 (標準重力加速度を用いて 9.80665 N)が働くとした圧力。 kgw cm-2 あるいは ksc と書かれることもあります。 「工学気圧」(単位記号 at)とも呼ばれ、以前よく用いられていました。

この計算を折り目正しくやると次のようになります。

例題 1. 【解答例】 圧力を P とすると、P = x kgf cm-2 = z atm したがって

x = [atm / kgf cm-2] z = [1 atm/ 0.968 atm] z = 1.033 z

であるから

y = 0.22 + 0.52 x = 0.22 + 0.52 × 1.033 z = 0.22 + 0.54 z

この計算のポイントは、xyz がいずれも数値であって物理量ではないということだといえるでしょう。 解答例では圧力 P は物理量で、x kgf cm-2 と、 明瞭に (数値) × (単位) の形に書かれています。 それが問題文では x (kgf cm-2) とされていて、あたかも x が物理量で、 その注釈のように単位が添えられているようにも見えます。 こうしたところから、たとえば次のような変換をしてしまうことがあります。

0.52 x = 0.52 x (kgf cm-2) = 0.52 x (0.968 atm) = 0.50 x (atm) = 0.50 z

どこがどのように間違っているか考えてみてください。 こうしたまちがいは、たいていの場合、 とんでもないケタ違いの結果になるのですぐにわかりますが、 この例題の場合のように、数 % のちがいとなると、見逃されてしまうことがあります (特に "都合のいい数字" になる時)。 こうした物理量と数値の取り違えを未然に防ぐためのお約束、 それが先にも触れた「数値と単位記号の間にはスペースを挟む」というルールだと思っていただいてよいでしょう。

誤りがないように、そもそもの関係式を物理量の関係式として書き下すこともあります。 たとえば風船の直径を d として
  d / m = 0.22 + 0.52 (P / kgf cm-2)
のようにするわけです。 この方が物理量と数値の関係が明確ですが、 数式がごてごてして見通しが悪くなり (2次方程式の根の公式に単位を入れて記述したところを想像してみてください)、 何が最善かは難しいところです。

1-2.注意すべき物理量と単位の扱い

物理量が (数値) × (単位) で表されるというのを見てきたわけですが、 あまり単純に扱えないケースもあります。 よく出会うのは角度の単位ラジアン rad など、単位が 1 と見なされる物理量です。

角度のラジアンは、半径と円弧の比で定義されているので、 物理量と見なせば、数値に単位 1 を掛けたものです。 同様に例えば体脂肪率は体脂肪の重さと体重の比ですから、 これまた同様に数値に単位 1 を掛けたものです。 そこで、問題にしている物理量の単位 1 の出自を明瞭に示すために、 角度として単位記号 rad (= 1) を明示する、あるいは組立単位として m/m と表記する (体脂肪率なら kg/kg)ことも行われます (ラジアンは以前「補助単位 supplementary unit」として別格扱いされていた時代もありましたが、 現在 SI では単位 1 の物理量として扱います(1995 年の国際度量衡総会 CGPM))。

ある物理量に対して使われる単位は基本的に1つというのが SI のルールですが、 単位 1 の場合に見られるように、逆は真ではありません。 例えば後にも取り上げるエントロピーと熱容量は、同じ J K-1 という単位を持ちます。 またラジアン rad の場合同様、基本単位で表すと同じになるエネルギーと力のモーメントの場合、 エネルギーの単位は J、力のモーメントは N m とされるのが普通です(J = N m = kg m2 s-2)。

また物理量の中には、単に「数値と単位の掛け算」で記述できない場合もあります。 温度について 300 K = 26.85 °C から 1 K = 0.0895 °C といった関係を導出することはできません。 温度の場合には、山の高さでいう標高同様、ある基準点の存在が単位の表記に組み込まれている形になっています。 温度差については、1 K = 1 °C が成り立つのですが、 温度については熱力学温度 T と摂氏温度 t は次の関係で結ばれています。

T / K = t / °C + 273.15

以前は温度差と温度を異なる物理量としてとらえ、 温度差の単位を deg 、温度を °K や °C といった形で表記していました。 昔の教科書などで、熱容量の単位に cal deg-1 といったものが用いられているのはこのためです。 国際的には 1964 年から温度差と温度の区別をなくし、統一的に扱うことになりました(°K が K に)。 「絶対温度 absolute temperature」という表現はこうした前時代の産物で、 今日では単に熱力学温度 thermodynamic temperature と呼ぶことになっていますが、・・・

1-3.国際単位系 SI

計量の単位は、商取引、税などにもかかわって重要な政治的課題でもあります。 ややもすれば、恣意的な単位が横行し(徴収用と配給用の分銅や桝(ます)が違ったりするのは古代からある話です)、 暦や度量衡(長さ・体積・重さ)のシステムを正確に維持・機能させるには、 国家的な力が必要とされ、それは今も昔も大きくは違いません。 今日、そうした単位の体系として世界的に運用されているのが、国際単位系 SI(systeme international d'unites)です。

SI は、メートル m、キログラム kg、秒 s などの基本単位の上に立った、 首尾一貫した(coherent)計量の体系となっています。 SI を用いると、物理量の間の関係式に数値を代入したとき、 物理量固有の係数を除いて、余分な要素が入ってきません。

たとえば電熱器で水を加熱することを考えましょう。 100 V で 2 A の電流を流して、200 g の水を加熱する時、 電流を 1 分流し続けたら何 °C 温度が上がるか概算することを考えてみましょう。 水の比熱容量を c、水の質量を m、温度上昇を ΔT、電圧を V、電流を I、通電時間を t とすると、 次の関係が成り立ちます。

mc ΔT = VIt

水の比熱容量を c = 1.0 cal/ g °C とし、1 cal = 4.2 J とすると、次のような計算になります。

ΔT = VIt/mc = [100 × 2.0 × 1.0 / (200 × 1.0)] × [V A min/ (g cal/ g °C) ] = 1.0 × [J s-1 60 s/(4.2 J/°C)] = 14 °C

この計算で、単位の計算のコストが高いことに注目ください。 最初からすべて SI 単位にしておれば、次のようになります。

ΔT = VIt/mc = [100 × 2.0 × 60 / (0.20 × 4200)] × [V A s/ (kg J/ kg °C) ] = 14.0 × [J s-1 s/(J/°C)] = 14 °C

この計算では、単位についてはその次元だけ考慮すればよい形になっています。 これが「首尾一貫した(coherent)」単位系であるということで、 SI 単位を採用することが強く推奨される理由になっています。

なお実用に大きすぎる、あるいは小さすぎる単位については、接頭辞を付けて 10n の因子を省くことができます。 代表的な接頭辞を表 1 に示します。

表 1.べき乗を表す接頭辞
記号読み方倍率
Tテラ1000000000000倍1012
Gギガ1000000000倍109
Mメガ1000000倍106
kキロ1000倍103
hヘクト100倍102
dデシ10分の110-1
cセンチ100分の110-2
mミリ1000分の110-3
μマイクロ1000000分の110-6
nナノ1000000000分の110-9
pピコ1000000000000分の110-12

これ以外にも、現在、大きな数については 1030(Q クエタ)、小さい数については 10-30(q クエクト)まで、 接頭辞が決められています。 またほとんど使用されることがありませんが、10 倍を表す da デカという接頭辞も用意されています。 接頭辞の使用法について、特に決まりはありませんが、たとえば 1027 がロナ R だからといって、 地球の質量を 6.0 Rg というのは、誤りではないですが、(特にわれわれ老人には)違和感があります。

SI の起源をたどると、18 世紀末のフランス革命に遡ります。 当時さまざまな単位の合理化が図られ、たとえば時間なども十進法への転換が指向されました(1 週が10 日、1 日が 10 時間 ・・・)。 時間については失敗に終わったのですが、 度量衡(長さ・体積・重さ)については、基本単位(メートル)が定められ、 十進法への転換が進み、 さまざまな変遷を経て 1875 年にメートル条約という形で、 国際的な協約が結ばれることになりました(日本は 1885 年に加盟)。 その後、電磁気や温度などにも幅を広げ、 1960 年、基本単位として m、kg、s、A、K、cd を採用する、首尾一貫した単位系として SI が成立することとなりました(1971 年から mol が加わります)。

1-4.物質量

化学で特に重要な量に物質量があります(物質量は単なる「物質の量」でないことに注意)。 古くから異なる物質でもある質量比を取ると同等にふるまうことは、 酸と塩基の中和反応や沈殿の生成反応など(「当量 equivalent」と呼ばれます)、 あるいは浸透圧や凝固点降下現象など(束一性 colligateive property と呼ばれます)についてよく知られていました。 こうしたいわば物質の背景にある量を「物質量」amount of substance と呼び、 物質を構成する基本粒子 elemental entity の数に相当します。 現在 SI では、6.02214076×1023(アボガドロ数)個の基本粒子を 1 mol と定義しています 。 (アボガドロ定数 NA は基本粒子の個数と物質量の単位 mol の換算定数で、 正確に 6.02214076×1023 mol-1)。

また 12C の質量の 1/12 を統一原子質量単位 u(unified atomic mass unit。物理量としては mu という記号を用います。 生化学などでの分野ではダルトン Da という単位も使われます 1 Da = 1 u)として、 基本粒子の質量と統一原子質量単位の比を原子量、分子量、式量などと呼びます。 原子量、分子量は単位 1 の物理量であり、 物質量当たりの質量をあからさまに表わす時は 「モル質量」ということばを用います。 このことをはっきりさせるため、比原子量、比分子量といったことばも推奨されています。

一般に基本粒子のとり方には任意性があります。 もっぱら化学式が単純な形になるように設定されますが、その成り立ちに注目して分子式などの形で設定されることもあるので注意が必要です。 物質量の記載に当たっては、対応する化学式を表記しておいた方がよいでしょう (例えば五酸化リンの化学式には P2O5 あるいは P4O10 という表記があります)。

1-5.溶液の濃度・組成の表現

化学熱力学では、しばしば混合物を取り扱い、 混合物・溶液の成分の濃度・組成を問題とします。 小学校でも教わるわけですが、この濃度や組成の表現が難物です。

濃度は、公式には、単位体積中に含まれる量のことです(JIS Z8000-1「量及び単位-第1部:一般」)。 ですから組成を示す質量百分率などは濃度でないことになります。 けれども、実際にはかなりルーズに濃度という言葉が使われており、 たとえば食品関係で塩分濃度ということばで、質量百分率が使用され通用しています。 化学熱力学では従来から、モル濃度と質量モル濃度を、次元の異なる物理量ですが、 同じ ”濃度” ということばで通用させています。

話を具体的にするために A (モル質量 MA g/mol) と B (モル質量 MB g/mol) の2成分をそれぞれ a g、b g 含む、 体積 V L の均一な溶液を考えます(リットル L は 1 L = 1000 cm3 = 0.001 m3 = 1 dm3)。 A が B に比べて大量にある時、A を溶媒、B を溶質と呼び、 もっぱら溶質 B が注目されます。 さまざまな種類の濃度・組成の表現がありますが、化学熱力学関連でよく出会うのは次のようなものでしょう。

  1. 質量濃度 ρB mass concentration \[ \rho_\mrm{B} = \frac{b}{V} ~\mrm{g/L} \]
  2. モル濃度 cB amount concentration。正式には amount-of-substance concentration。以前は molarity とも。 \[ c_\mrm{B} = \frac{b/M_\mrm{B}}{V} ~\mrm{mol/L} \]
  3. 質量モル濃度 mB molality:溶媒 A 1 kg あたりの溶質 B の物質量 \[ m_\mrm{B} = 1000 \x \frac{b/M_\mrm{B}}{a} ~\mrm{mol/kg} \]
  4. 溶媒 100 g あたり溶質質量 sB :小学校でもおなじみ。古く溶解度の表現に利用。 \[ s_\mrm{B} = 100 \x \frac{b}{a} \]
  5. 質量分率 wB mass fraction :しばしば百分率 % で表示。 \[ w_\mrm{B} = \frac{b}{a + b} \]
  6. モル分率・物質量分率 xB mole fraction, amount fraction:モル分率という呼称は JIS では非推奨です(JIS Z8000-9)。 \[ x_\mrm{B} = \frac{b/M_\mrm{B}}{a/M_\mrm{A} + b/M_\mrm{B}} \]
  7. 体積分率 φB volume fraction: 下式で ρX は純粋な成分 X の、同温・同圧での質量密度です。 \[ \varphi_\mrm{B} = \frac{b/\rho^\bullet_\mrm{B}}{a/\rho^\bullet_\mrm{A} + b/\rho^\bullet_\mrm{B}} \]
c の質量モル濃度の単位として「mol/溶媒-kg」といった記述も行われますが、 SI では許されないことになっています(「単位記号には物理量以外の説明を加えない」という原則があります)。 同様に d も「g/溶媒-100 g」といった単位の記述は許されないことになっています。 このお話では、できるだけ SI に沿った記述を心がけるようにしますが、 あまり窮屈な時は足を踏み外すことがあると思います。 その分にはお手柔らかにお願いします・・・。

ざっと 7 種類ばかり「濃度・組成」でくくられる物理量を並べたのですが、 たいていおなじみの濃度・組成の表現で、 一つ一つ取れば、さして複雑な構造を持たず、 改めて解説するほどのことはないでしょう。 ですが、単位をみると、 a は g/L、b は mol/L、c は mol/kg、 d ~ g は単位 1 で、単位も異なる別々の物理量ということになっています。 これ以外にも、気体混合物では、分圧が用いられているのもご存じでしょう。

こうした状況になるのは、 混合物の取り扱いの容易さ、そして濃度・組成をはかる目的が深くかかわっています。 たとえば 250 g の水に何 g の食塩が溶けるか知りたい場合、 溶解度は d の溶媒 100 g 中の溶質の質量で与えられている方が便利です。 一方 300 g の食塩水を蒸発させて得られる食塩の重さを知るには、質量分率が便利です。 このように濃度・組成の表現にどれを用いるかは、 その目的に応じて便利なものを用い、 必要があれば適宜換算してやればよいようなものです。 たぶん小学校から高校まで、こうした計算問題を、 みなさんいろいろやって(やらされて)きたのではないでしょうか。

上に挙げた濃度・組成の間の換算では、 e ~ g の ”分率” の間の換算が少し厄介ですが、 たとえば質量分率 wB とモル分率 xB の間の換算は、 次のようにすればよいでしょう(それぞれ最後の表現は計算量が少ないのですが、 wB = 0 のところでは発散します)。

\[ x_\mrm{B} = \frac{b/M_\mrm{B}}{a/M_\mrm{A} + b/M_\mrm{B}} = \frac{w_\mrm{B}/M_\mrm{B}}{w_\mrm{A}/M_\mrm{A} + w_\mrm{B}/M_\mrm{B}} = \frac{1}{1 + (1/w_\mrm{B} - 1) M_\mrm{B}/M_\mrm{A}} \] \[ w_\mrm{B} = \frac{b}{a + b} = \frac{M_\mrm{B} x_\mrm{B}}{M_\mrm{A} x_\mrm{A} + M_\mrm{B} x_\mrm{B}} = \frac{1}{1 + (1/x_\mrm{B} - 1) M_\mrm{A}/M_\mrm{B}} \]

換算はこれでいいのですが、こうした計算が往々にして混乱を招くので、 たとえば d の表現質量分率に移行させるなど、 比較的簡単な計算で換算できる表現は、統一する方向で調整されつつあります (統一には余分の計算の手間が発生するのですが、 計算機の発達した今日では問題になりません)。


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