2024.10
吉村洋介

中和反応の体積変化とイオンの静電収縮をめぐって
  ~~ 液体の誘電体モデルの昔ばなし

ここで紹介するのは、2019 年 9 月に開かれた液体の化学夏の学校の余興におはなしした 「誘電体モデルと化学平衡の昔ばなし」から、 中和反応、酸解離反応の体積変化と静電収縮理論に絞って、 まとめなおしたものです。

中和反応については小学校で、 中和熱についても中学高校で学びます。 では塩酸を水酸化ナトリウムで中和すると、体積は増えるでしょうか、減るでしょうか? あるいは塩酸をアンモニアで中和するとどうでしょう? やってみると、水酸化ナトリウムで中和する時は体積の増加が、 アンモニアで中和する時はそれほど大きくはありませんが体積の減少が見られます。 これは百年以上前に知られていることですが、 意外に最近の人たちには、液体や溶液の化学を専門にしている人たちにさえ、耳遠いものになっているようです。

こうしたイオン反応の体積変化の問題は、 電場によって誘電体が収縮する現象(静電収縮)と関わって、 溶媒を誘電体と見なす立場からの大胆なアプローチを生み出しました。 このおはなしでは、初期の中和反応あるいは酸解離反応にともなう体積変化の研究と、 まだ分子構造なども定かでない時代、 誘電体モデルによる理解に取り組んだ先人の試みを紹介しようと思います。

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