溶液の酸性度(塩基性度)は溶液中の化学反応にきわめて大きな影響を与える。 したがって、水溶液中の化学反応を行う上でも、また廃液を環境に放出する上でもpHの制御には十分な注意を払う必要がある。 ここでは、ハンディpHメーターあるいはpH試験紙で、さまざまな溶液のpHを測定し、pHや溶液の緩衝作用について定性的に理解することを目指す。 なお実験に先立って参考資料II-8の<pHの原理と測定>に目を通し、またpHがどのような変化を示すかあらかじめ予想を立てておくこと。
以下の溶液を調製する(いずれも試薬ビンに入れラベルをして保存する)。
この課題で出る廃液は、指針Aに従って処理する。
初代簡易pH計(モノタロー製。販売終了) | 現行簡易pH計(pH-98103。Kmoon) |
高校までに pH や緩衝溶液について習ってはいるのですが、 実地になると結構怪しい学生諸君が多いようです。 特に化学実験では廃液の処理などで中和処理が頻繁に出てくるのですが、 その化学的な背景を理解した上で処理に臨んでもらわないと、 とんでもなく時間をかかったり、 強酸性・強アルカリ性の廃液の排出をしたりすることにつながりかねません。 そこでちょっと3回生ともあろうものを小ばかにしたような実験とも見えるかもしれませんが、 かんたんなpH の実験に取り組んでもらうようにしています。
以前は後の本格的な pH の実験で使用する ±0.01 ぐらいの pH 計を使ってもらっていたのですが、 初心者にはいささかハードルが高く、 幸い安価な pH 計(< 5千円)が利用可能になったので、2011年度から簡易 PH 計を利用するようにしました。 この pH 計、公称 pH 0 ~ 14 で ±0.1 ということになっていますが、 実際は後でも紹介しますが pH 2 ~ 10 ぐらいで使うのが無難です。 また昨年(2019年)から使用している機種は 0.01 まで表示してくれます(pH 4 とpH 7の2点較正)。 この値自体は、精度的にあまり意味がないのですが、 変化量(例えば化学反応にともなう pH 変動)を見る分には便利です。 ただ学生さんの中には、この値を固く信じる向きがあったりして、 ちょっと考えるのですが・・・
最初にいろいろ酸塩基の溶液を調製してもらいますが、 見てもらうと分かるように、 アンモニア緩衝液以外をみんな混ぜれば中和されるように設定してあります。 指定どおりに調製すれば、廃棄する際、中和処理を忘れても何とかなるはずです。 なおアンモニア緩衝液を廃棄しないよう注意です(後の合金の分析でも使用)。 アンモニア緩衝液といっても、いろんな pH の緩衝液が使用されていますが、ここで調製する緩衝液は、 薬局方にも載っている pH 10.7 のものに相当します。