2007.9.12.

化学量論・化学反応方程式の話

吉村洋介

このお話は学生実験の補講の形で3回生諸君にした話を再構成したものです。

化学量論 stoichiometry(ギリシャ語stoikheion (元素)+ metria (計量))というのは、 元来、物質の示す諸物性とその化学組成、とりわけ元素組成との関わりを探求する学問分野のことです。 ですから物質の密度や屈折率などと化学組成の関係も化学量論の守備範囲であり、 19世紀から20世紀初頭にかけて、化学量論は多彩な内容を含む広範な分野として認識されていたようです。 しかし分子論が確立する中で、化学量論という巨大な分野は解体して行きました。

この失われた学問分野について語ることはまたの機会にして、 ここでは高校程度の化学と初歩的な線形代数の知識を前提に、 今日の常識的な理解、 つまり化学反応方程式の係数(化学量論係数あるいは単に量論係数とも呼ばれます)の釣り合わせ方という文脈で化学量論を扱い、 そしてその背景にある化学者の“世界観”についても少し触れようと思います。 化学反応方程式の係数の決定という、極めて初等的な問題の背後にある風景に、少しでも目を向けてもらえたらと期待します。

1.化学反応方程式と反応進行度

2.化学反応方程式の量論係数の決定と線型空間

3.反応方程式の複数の反応方程式への分解

4.酸塩基反応/化学当量・規定度

5.酸化還元反応/酸化数

6.化学反応方程式の自由度/基底の選択

7.終わりに

補論: 化学量論と分子・化学種


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